ぼく自身は「これが石原流仕事術」などと堅苦しく考えたことはないんですが、とにかく目の前のお客さんを全力で喜ばせることを常に意識していました。ぼくの場合は、花屋から始めていまはランドスケープアーティストとして活動していますが、この考え方はすべての職業にあてはめられると思います。“お客さん”を“社会”に置き換えてもいいですよね。「どうすれば喜ばせることができるか」と考えていくと、自然と“今すべきこと”が見えてくるんです。これがぼくの基本です。
「人をびっくりさせるのが好き」という気持ち、でしょうか。「お客さんをあっと言わせたい」「笑顔が見たい」これに尽きますね。たとえば完成した庭を見て、お客さんが「わー!すごい!」と驚いてくれたら、それだけでぼくは満足。そのためだけにがんばれると自信をもっていえます。
常にプラス発想でいよう、と思っています。仕事をしていると日々トラブルが起きたり、問題が発生したりしますが、どんなときも前向きに。八億円の借金を背負ったときも、この前向きな気持ちだけは忘れないようにしました。あと、人の悪口は言わないことですね。人を悪く思う気持ちは負のエネルギーをもって自分に跳ね返ってきますから。いやなことがあったときでも、いつでもできるだけ気持ちが上向くように、気分の切り替えを心がけることも大切です。美味しいものを食べに行ったりとか、ね。ちょっとしたことでいいんです。このプラス発想を習慣づけてしまうと、物事は良い方向にすべり出すと思いますよ。
――読者へのアドバイスをお願いします。
たまに、ぼくのことを知った人から、どうすればぼくのようになれるかと聞かれることがあります。でもぼくはごく普通の人間。だからぼくは逆に訊くんです、「あなたは本当に必死になっていますか」と。人間、必死になればたいがいのことはできます。もし必死になっても全然うまくいかないという人がいたら、それは必死になる方向が少しずれているのかもしれないですね。あと、すぐに答えが出ることを期待しているのかもしれない。それは難しいことです。ぼくだって25歳で独立して、ここまで来るのに25年かかっています。
ローマは一日にして成らず。伝説をつくれ、とぼくはよく言っていますが、お湯をかけて三分でできあがり、なんてうまい話はありません。じっくり、あきらめずにやり続けることですね。
また、不況にこそチャンスあり、と思っています。世の中に停滞感がただよい、保守的な空気が濃くなっているときこそ、抜きん出るチャンス。年齢は関係ありません。ぼくがチェルシーに挑んだのは40代半ばです。もし今まで必死になったことがない人は、一生に一度くらい、力をふりしぼってみてはいかがですか。ぜひ、必死になって、夢をつかんでほしいと思います。
石原和幸プロフィール
ランドスケープアーティスト。
1958年長崎市生まれ。大学卒業後、生け花の本流「池坊」に入門。花の魅力にとりつかれ、地元長崎で路上販売から花屋をスタート。35歳で庭づくりをはじめる。事業がうまくいかず借金をかかえながら、2004年、英国の国際ガーデニングショー「チェルシー・フラワーショー」に初出展、シルバーギルトを受賞。2006〜2008年には、史上初となる3年連続ゴールドメダル受賞の快挙達成。以降、緑の力で世界に貢献すべく、多方面で活躍中。 |